手段としてのソフトウェア

作りたいものが見つからず不安なので,せめて何か蓄積したいと思いました。

数学ガールの秘密ノート/行列が描くもの を読んだ

今回も,結城先生のあのシリーズから,「数学ガールの秘密ノート/行列が描くもの」です。

先に結論だけ申しますと,今回も最高でした。なぜ今まで行列のことを使いこなすことも,そもそも知ろうとすることさえしなかったのか,後悔してもしきれない思いでした。こんなにも整った概念を使えずにいたなんて・・・

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今回も電子書籍で。ノートも新調。カバーは,ほぼ日手帳のTSブラック2009

ところで,実は行列に取り掛かる前に,ちょっとビビッてしまって,先に「丸い三角関数」も読みました。

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こちらも当然のごとく面白かったのですが,三角関数については,仕事で少し馴染みがあったこともあり,比較的すんなりと理解することができました。そして最後に回転行列が登場したところでは,やはり先に読んでおいてよかった,やっぱり刊行順に読んだほうが楽しみが大きくなると思いました。

 

ともかく,今回は行列です。行列には高校のころから苦手意識がありました。そのうえ,大学受験時に,志望校の赤本に「過去,行列分野の出題実績は一度しかなく,ここ10年ほどは出題されていない。出題される可能性は低い」と書かれていたのを信じて分野ごと諦めてしまったのでした。

しかも,実際には,前期試験を受けに行って,数学の問題が配られた時点で,大問 1 に行列が透けて見え,絶望したのでした。

まあ,その,情けない自分語りはともかく(どうして理系を選んだのでしょうね),本題にまいります。この「行列が描くもの」も,すっごく面白かったですよ。

 

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写経したり地道に計算したり。楽しかった!

行列は難しい?

そもそも,名前からして直観に反するというか,手計算するとなると計算量も多いし,ふつうの四則演算と違って制約も多いし,なんだか覚えることが多くてややこしいし・・・と嫌いになるための理由は探せばいくらでもありました。

ユーリ「うわー!なんだこのややこしさー!手加減なしかー!」

僕「定義に手加減も何もないよ」  ー本文P43より

おまえは身も蓋もないよな,と。まさにこういう気持ちでいました。

 

本書は,行列とはなにかをていねいに定義していくところから始まります。

行列を定義するために,数の世界にも立ち戻りながら,ゼロとはなにか,イチとはなにか,そして行列におけるゼロとはイチとは・・・と考えていきます。

これまでほぼ意識することなく,当然のものとして扱ってきたゼロ,イチ,数,和,差,積,商,逆数,複素数・・・これらの本質を見つめなおし,行列に当てはめ,定義していきます。

 

行列は,架け橋だった

この,いわば「概念を具体化していく」様子には,静かな興奮を感じました。私がソフトウェアを仕事にしてきたからか,オブジェクト指向との関連を自然と意識しました。

「行列」というクラスを定義し,演算子を定義し,実装していく・・・オブジェクト指向言語における「演算子オーバーロード」というものが,初めて知ったときは「よくこんなことを思いつくな」と思ったものですが,数学をきちんと学んでいれば,むしろ自然なことだったのだとわかりました。

行列は,数を継承して定義された概念であり,ベクトルや幾何など他の概念からも参照される,汎用的なものとして美しく設計されているのだ。このことを学べただけで,行列への見方が変わりましたし,知りたい,使いこなしたいと思えるようになりました。

 

行列は,楽しい! 

そして結城先生の手腕により,こんな私でも各章の章末問題がふつうに解ける(かかった時間は別として),投げ出したくならずに楽しく取り組めるようになるのでした。

一般の参考書と違い,説明を端折らない,冗長化しようとも繰り返しを恐れない,非常に丁寧な描写によって,置いて行かれたような気持ちにならず,自分の理解を確かめながら進むことができました。この「秘密ノート」シリーズは本当にありがたいです。

 

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ここからは,完全に主観による蛇足で,すでに語られているか,または全くの的外れなことを恐れず書きます。

数学ガール」シリーズで,放課後の図書室に集まる面々は,おそらくは,いわゆる「普通の高校生」のなかでは浮いてしまう存在ではないかと思うのです。

しかし,彼らはちゃんと仲間と出会い,放課後の図書室で穏やかに真剣に,数学を楽しんでいます。このシリーズからは,結城先生の「好きなことを追求するのは悪いことではない」「今の環境がすべてではない」「続けていれば,いつか仲間とは出会えるものだ」という優しいメッセージを感じます。各巻のエピローグで,成長した彼や彼女が生徒を優しく導く様子にも,放課後の図書室の暖かさはきちんと残っています。

好きなことを追求する,自分の関心に素直になるのは幸福なことだ,無理に周りに合わせることはないんだと,まさに中学生や高校生に向けて書いてくださっているのではないかと思いました。

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興奮冷めやらぬ長文駄文を失礼しました。この文章は,自分のために書いていますから,ご容赦くださいませね。

さて次は,何を読みましょうか。