数学ガールの秘密ノート/積分を見つめて を読んだ
今回は,積分です。いよいよ来たぞ,という気持ちで臨みました。
今回も kindle 版で購入しました。
ただ,やはり kindle paperwhite とは相性が良くないようで,iPad の kindle アプリと比べると表示が薄いようでした。kindle (無印) や Fire についてはわかりません。著者の結城先生も仰っていたように,無料の試し読みで確かめておくのがよいと思います。
さて,本題ですけれども,今回もとにかく面白かったです。
なんだか,巻を重ねるごとに読了にかかる時間が伸びてしまっています。力不足を嘆きたい気持ちもありますが,もしかすると,じぶんもテトラさんやユーリさんに感化されてきたのかもしれません。「もっと知りたい,きちんとわかりたい」という気持ちや,「いま,じぶんはまだ理解できていない」というときの感覚が鋭くなったように思います。より深く楽しめるようになった,といえるかもしれません。
また,この「秘密ノート」シリーズは,基本的にどの巻からでもたのしめるように書かれていますが,私の場合は「プログラマの数学 第2版」「数学ガールの秘密ノート/数列の広場」「数学ガールの秘密ノート/微分を追いかけて」を先に読んでおいて本当によかったと思いました。本書に登場する背理法,数列,極限,微分に怯まなくなった自分に喜びを感じました。
やはり,この「秘密ノート」シリーズは,以下のような点が非常にうれしいです。
1.「おもしろさの説明」にも力をかけてくれる
単なる参考書ではなく,小説の形をとっている利点はここにもあるように思います。本書に登場するガールズは,ときどき,数学好きな人が熱く語る解説や,「面白さ」を理解できなかったりします。そんなときは,概ね読者である私もまだピンときていません。そこで彼女たちは,私に代わって堂々と質問してくれます。そして質問された側は,彼女たちの「わかりたい」という気持ちに応えて,より丁寧に話をします。
この対話がすごくありがたいのです。「わからなさ」を嫌いにならなくて済むのです。
2.「考えるための助言」もきちんとしてくれる
前項の内容とも少し重なりますが,問題に対するときの目の付け所,何を目的として式変形していくか,いかにミスを減らすか,などの「考える方向性を検討するための引き出し」も,彼女たちとの会話のなかに自然にちりばめられています。
これがまた,うれしいのです。ぱっと見てよくわからない,という問題に向かうときに,「わからないまま立ちすくむ」という,あの悪夢のような時間を減らすことができます。
結果として問題が解けるかどうかは別の話ですが,武器や道具はひとつでも多いほうがいいし,慣れの問題も確かにあるとわかっているだけでも,気持ちが楽になります。
3.対象を複数の観点で捉えて,立体的に感じさせてくれる
特にこの点は,結城先生のご著書に共通する点だと思いますが,ひとつの解法や証明で終わりではなく,別の観点からの説明も用意してくださっているのがうれしいです。「世界を行き来する」と表現されていますが,もうそのフレーズだけでもわくわくしますし,結果が得られる瞬間はカタルシスさえ感じられます。気持ちいいのです。
特に今回は,定積分を数列で離散的に捉えなおす「定和分」なる概念も登場します。区分求積法との類似をなんとなく感じましたが,それはともかく,具体的な数式がひとつも出ないままに当然のごとく計算し,結果が出るさまには感動を覚えました。
他にも微分の公式を図形で表現してくださったりと,こんなにイメージを感じられる数学の本は,ちょっと他にないのではと思います。
4.「誰のために書いているか」を徹底されている
そう,わたしのようなものに向けて書いてくださっているのだと思います。
これだけ数学的な内容を分かりやすく,そればかりか物語として,登場人物たちも魅力的に表現するためには,「何を書き,何を書かないか」の取捨選択が相当に慎重に行われているに違いありません。
公式がひとつ登場するだけでも,単に公式を提示して終わりではないのです。登場するガールズは当然のように公式への疑問をぶつけ,式の背後にある考え方,公式が表現しているものについて考えを進めていくのです。数学すらも物語化している,といってもいいかもしれません。ここまでやってくださっているのですから,丁寧に向き合いさえすれば,入門するには最高です。好きになることから始められます。
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シリーズの総括みたいなふわふわしたことを書いてしまいました。
次はいよいよ「行列の描くもの」へ進むか,それとも「丸い三角関数」へ戻るか,悩ましいところです。いつも「次に読む巻」が最高に面白いので。