手段としてのソフトウェア

作りたいものが見つからず不安なので,せめて何か蓄積したいと思いました。

プログラマの数学 第2版 を読んだ

結城 浩 さんの「プログラマの数学 第2版」を読みましたので,感想などまとめておくことにいたします。

 

www.hyuki.com

 

先日から「リーダブルコード」,「すいません,ほぼ日の経営」に続いてこちら,ということで,なんだか新人とか若手の読書日記みたいになっていますが,いまの自分には必要なことだと思いますので,良しとしましょう。

ただ,kindle 版を購入したのですが,kindle paperwhite だと文字が薄く,濃度調整もできなくて少々難儀しました。iPadkindleアプリなどでは問題なかったので,kindle paperwhite と相性が悪かったようです。

 

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楽しみました

今回もメモなど取りつつ,本文中のクイズや証明などにチャレンジしつつ,毎日少しずつ読み進めたのですが,気づけば2週間近くかかっていました。とほほ。でも,たいへん楽しかったです。以降,この本を読んで良かったところを書いていきます。

 

1.カバーしている範囲が絶妙

書籍の目次を見ていただければ一目瞭然ではあるのですが,論理,数え上げ,指数,対数,帰納法背理法,そして第2版から追加された「機械学習への第一歩」と本当に絶妙です。習ったきり忘れていたり,なんだかふわふわしたままで使ったりしていた部分を,大賢者が過保護に教えてくれる感じで,幸せを感じました。

 

2.解ける,把握できるサイズにまとめられた例題

きっと本当はもっと複雑な例とか,美しい証明とかいくらでもあるでしょうし,ひとつの例を複数の視点で解説してくれたりしていて,分かっている人からすると冗長だったりするのかもしれないですが,徹底してわかりやすさを重視してくださっています。

なんというか,少し頑張れば,私のような力のないものにも理解できるのです。この感覚はほんとうにうれしくて,学ぶことの楽しさを味わうことができました。

 

3.「わからない,苦手」ということを責められない。やさしい

未読の方からすると,何を言っているんだ,という感じかもしれませんが,とにかく優しいのです。高校生のころから20年ずっと,数学(というよりも,算数,いや,「数のおけいこ」レベルか。。)が苦手でコンプレックスでした。それなのにソフトウェアを仕事にしている自分自身に,もはや焦りをこえて罪悪感さえ感じていました。

ですが,この本を読み,30代も後半に差し掛かった自分ですが,前向きな気持ちを持つことができました。特に,本文237ページ「苦手から生まれる知恵」のところで出てくる以下のフレーズは,読んでいて涙が出そうになりました。一部引用いたします。

  • 人間は,大きな数を扱うのが苦手です。ですから,数の表記法がいろいろ工夫されました。
  • 人間は,複雑な判断を間違えずに行うのが苦手です。ですから,論理が作られました。
  • 人間は,たくさんのものを管理するのが苦手です。ですから,グループ分けをします。
  • 人間は,無限を扱うことが苦手です。ですから,有限のステップで無限を扱います。

苦手でいいんだ,と思いました。苦手だからこそ,できるようになる工夫を楽しむべきなんだ,と思えました。

 

4.本書の位置づけが明確で,自然と次に進みたくなる

この本はあくまで入門であり,著者の手によって「あらかじめ,解ける,把握できるサイズに分割された問題」が扱われています。そのおかげで,「わかる」よろこびを味わうことができ,自然と次のステップへ進みたいと思えるようになりました。

また,ベクトル表現について書籍ごとに書き方が違ったりしますよ,とか,細かいことですが初学者には嬉しい説明も随所にあります。巻末に紹介されている,著者のひとことコメント付きの書籍リストも心憎い気配りです。自分は,やはり「数学ガールの秘密ノート」シリーズから行こうかなあと思います。

 

長々と書いてしまいました。とにかく,久しぶりに味わうよろこびがたくさんあったもので,テンションが上がってしまいました。読み終えてみて,結城先生が「書かなかったこと」に自然と興味が向くような,今の私には,とてもうれしい本でした。