手段としてのソフトウェア

作りたいものが見つからず不安なので,せめて何か蓄積したいと思いました。

数学ガールの秘密ノート/数列の広場 を読んだ

社会復帰に向けたリハビリ活動,今日も今日とて読書感想文です。いつになったらソフトウェアの記事を書くのか?結局書かないのか?はたして・・・

 

ともあれ,数学ガールの秘密ノートシリーズから,「数列の広場」です。

最初に結論を述べますが、登場人物たちと一緒に遊ぶとすごくたのしいので、おすすめです!

note4.hyuki.net

 

今回も相変わらず楽しいです。式変形なんかも,少しずつ自力でできるようになってきているのがうれしい。レベルが低いと言われてもいいのです。これからの男ですよ,僕は!

f:id:takumat1982:20190208203916j:plain

数列,楽しいネ

前回はとにかく「楽しかった!」という気持ちのままに書きなぐってしまいましたが,考えてみたら,それでは訓練になっていません。

従って今回は,本書の章立てにそって,内容の簡単な紹介も合わせて,ていねいに書いていきたいと思います。数列の広場は本当に広大でしたが,考えて書く訓練!です。

そのため少々長くなっています。もし,ありがたくも拙文を読んでくださっている方がいらしたら,言うまでもないと思いますが,途中で切り上げてくださいね!

 

第1章 並ぶ数,広がる数

 本章は,オセロ盤という具体的な世界から始まります。「僕」がユーリさんにオセロで惨敗続きという,そんな男子高校生の部屋があってたまるか,という妬みの気持ちからスタートです。いえ,冗談です。本当です。

 まずはオセロ盤の上,具体的に把握できるサイズの問題から始まり,徐々に盤をはみ出して,より広い世界へと考えを広げていきます。平方数,数列という概念,定数列,等差数列,階差数列と,「わかった (思い出せた) 範囲」を一歩ずつ広げていく感覚がとても心地よいです。オセロ盤と石,という具体的なイメージがあるおかげもあってか,手を動かしながらていねいに読みさえすれば,ここでは生徒役のユーリさんの思考を追体験できます。

さあ,はじまりました,というワクワク感のある章です。

 

第2章 驚異のシグマ

 舞台は高校の図書室へ移ります。こんどはテトラさんとのイチャイチャタイムです。おのれ。いえ,読んでいくうちに自然とテトラさんに感情移入し,「僕」先輩ステキ!となります。

ここでは指数や添字,Σ (和の記号) についてなど,これからお付き合いを深めていく相手との自己紹介タイムのような会話からはじまります。

この章から伝わってくるメッセージは,「恐れることはない,知ろうとすればいい」です。Σ について,「どう便利なのか」「何がうれしいのか」をていねいに示してくれます。また,生徒役のテトラさんがいるおかげで,ちょっとわからないところがあっても落ち着いて進んでいけます。「わからない」というのは「慣れていない」「ちゃんと興味を持てていない」というだけかもしれないよ,と優しく導いてもらえます。

自分がそうだからかもしれませんが,ソフトウェアに関わる方なら,本章の内容は共感できるものが多いのではないかと思います。少し本文から,登場人物たちのセリフを引用します。

 

  • 「数式も楽譜も,<世界共通の言葉> だしね」 (P.39)
  • 「英語の構文解釈。あれと似てる」 (P.40)
  • 「数式は言葉。言葉は思考の道具。道具を磨き,思考を磨き,表現を磨く」 (P.55)
  • 「私たちは『大局的な姿』と『局所的な姿』の関係をとらえようとしている」 (P.70)

 

プログラミングを学ぶ時と似ていると思いませんか。

そして何よりも,突然音楽の話を始めたりと,たとえ突拍子もないと思われようとも「なんとかわかりたい」と振る舞うテトラさんの姿に胸をうたれます。私もこうありたいものです。

第3章 いとしのフィボナッチ

 正直,フィボナッチをいとしいと思ったことはない。いや,そんなことはいいのです。

舞台は自宅へと移り,ユーリさんとの時間を過ごす (ちくしょう!) この章は,ゲーム等のスペックの数字 (「1024通り」とか「64ビット」とか,ソフトウェア関係者ならお馴染みのあれです) から冪乗の話題,フィボナッチ数列等比数列の話,果ては鳩の巣原理へと進みます。

それと並行して,話は「予想と検証」「具体例と一般化」といった考えるための道具についても広がっていきます。

この章は,いわば「抽象と具体」を行き来したり,数式という表現になじんでいくためのトレーニングのような内容です。考える筋肉が喜んでいるよ!

 知っていると思っていることでも,改めて手を動かして考えてみたり,数式をじっくりと眺めて,そこで表現されているものについて思いをめぐらせてみたりすることで,新鮮な気持ちを味わうことができます。

 

第4章 シグマったり,ルートったり

舞台はまた,図書室へ。この章では,「村木先生」(まるで,ヨーダ師のようだ) からのお題を楽しみます。

「僕」とテトラさんとで,これまでにも触れられてきたような各種の手法,具体的な数字を当てはめて考えたり,並べて書いて眺めたり,さらには数値をプロットしてグラフ化してみたりと,いろいろな手法で問題に向き合っていきます。

そして,おぼろげながら目標の姿が見えてきたところで,いよいよ数式の登場です!掛けたり,割ったり,足したり,引いたり,一見複雑ですが,確かな道のりを歩いていきます。ああ,式変形って気持ちいいものなんだな,と改めて思います。

 

私も普段,なにかのデータを解釈したいと思うときにはグラフ化してみたりソートしたり,平均をとったりいろいろと手を尽くします。それに,データに限らず,ほんとうにわかりたい,と思うものに対してはいろいろな方法でアプローチすると思います。数学も同じなのだな,と改めて気づかされました。

 

しかし「僕」のやつ・・・夕方の静かな図書室でテトラさん (魅力的な大きな目,甘い香りもする) とふたり,試行錯誤しながら,秘密を解き明かしていく・・・期待と落胆,混乱,そして発見と興奮・・・なんだこれは・・・おのれ・・・でも結局は「僕」先輩ステキ!そしてミルカさん無双!かつ意味深!

 

第5章 サイコロ娘の極限値

 いよいよ本書もクライマックスです。情緒的なクライマックスは前章だった感はありますが,それはそれです。思い入れが過ぎました。

舞台は再び「僕」の自室へ。「変わったサイコロ」という具体的なものから話は広がっていきます。展開図を作ってサイコロの目の並びを眺め,入れ替え,予想して検証し,そして数字の列は限りなく広がっていきます。数列とは,表でありグラフであり,平面で,空間で,まさに「広場」であります。

サイコロでひとしきり楽しんだあとは,「村木先生」からのお題が登場します。一見,ソフトウェア関係者なら馴染みのある数字ばかりで,これは自分でもいけるか?と思いますが,これが絶妙にややこしく,おもしろいです。

自分でも,「僕」やユーリと一緒に具体化し,一般化し,代数を使い,掛けたり割ったり足したり引いたり,じっくり時間をかけて楽しみました。

ほんとうにおもしろかったので,これから読まれる方は,ぜひご自身でも数式をいじくりまわして楽しんでいただきたいと思います。「いや,これくらい楽勝でしょ」という賢い方は,それはそれでうらやましい。

 

ーーーーー

ちなみに,各章ごとの問題もたいへん絶妙です。すっとできるものもあれば,計算間違いや勘違いで悔しい思いをしたり,違う解法で挑んだために変な回り道をしたりしましたが,解説と合わせて楽しめました。最後の研究課題までは,力及ばず手つかずですが・・・

 

すっかり長くなりました。結論としては,本書もやっぱりおすすめです!