手段としてのソフトウェア

作りたいものが見つからず不安なので,せめて何か蓄積したいと思いました。

数学ガールの秘密ノート/ベクトルの真実 を読んだ

社会復帰に向けたリハビリ活動,続けています。

数学ガールの秘密ノート/ベクトルの真実 を読みました。

note6.hyuki.net

 

「プログラマの数学 第2版」のときと同じように,今回もメモなど取りつつ,章末問題も正面から取り組みつつ (そして普通に返り討ちにあって泣きそうになりつつ) じっくりと楽しみました。

 

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今回は紙の本です

こういうものは,やはり早く読み終えようと急いで読んでもだめで,必要なだけ時間をかけるとたいへん楽しいですね。また,紙の本だとページを押さえたりするのが面倒ではありますが,液晶画面のように,不意に自分の顔が映り込んでダメージを受けることがないのは良いです。

さて,以下,感想です。数学的な内容についてと,小説としての魅力について,僭越ながら自分なりに書きました。

 

1.数学的な内容に関して

基礎の基礎を,つかんで伸ばして転がして

見出しのままではあるのですが,ベクトルについての話をするのに,まずは身近で具体的な例として「力 (重力,張力,作用・反作用など)」の話から入ってくれています。

そこから,図形の話,数とベクトルの関係,等しさの定義から集合と同値による分割,そして関数空間への拡張と,具体から抽象へ世界が広がっていきます。私のような数学音痴にとっては,「関数空間」なんて単語が出てくるだけでもう,こう,「勉強してる感」が出て非常にうれしいわけです。

結城先生が良くおっしゃっていますが,「複数の世界を行き来して考える」という思想が本書にも良くあらわれていて,物事の本質に複数の光を当てることで,その姿が浮き彫りになっていくような,頭をぐらぐら揺さぶられるような,不思議な感覚を味わいました。

各章ごとの問題も難しすぎず簡単すぎず (とはいえ,普通に間違えまくって何度もやりなおしましたが),さらに回答も複数の解法を丁寧に示してくれていて,自分が何に気づくべきだったか,どこを理解できていないかがよくわかります。

とにかく,楽しかったです。そして,次のステップへ行こうと思えました。

 

2.小説としての魅力について

数学を通して真理に近づく,まるで祈りをささげるように

シリーズ全作を読んだわけではありませんので,他ではどうかわかりませんが,「僕」を通して描かれる世界は穏やかで,しずけさと美しさに満ちています。「博士の愛した数式」もそうでしたが,人々が真摯に数学と向き合う空間は,静謐で,神聖な気配さえ漂ってくるものなのかもしれません。

夕日差す放課後の図書室は,まるで教会のようです。「僕」たち敬虔な信徒たちが,数学が見せてくれる世界の広がりへ,静かな情熱をたたえて日々向き合っています。

本書では,世界は基本的に「僕」を通して描写されます。魅力的な女性たちも登場しますが,客観的な外見の美醜は表現されません。あくまで「僕」にとって,どう魅力的か,という観点のみです。

「僕」は,いつでも誠実で,自分がどのように考えたかを大切にするとともに,他者がどのように考えているかも大切にします。先に立って導いてくれる教師や「ミルカさん」にはもちろん,後輩の「テトラちゃん」やいとこの「ユーリ」にも,敬意をもって接し,それぞれの考えを尊重します。

高校生らしく,異性を意識する淡い心のうごきもありますが,とにかく登場人物たちの在りようが素晴らしく,ときおりにじみ出る個性や人間らしいしぐさもいとおしく思えます。特にミルカさんから感じられる,彼女の抱えてきた孤独と誇り,仲間を見つけた喜びは味わい深いものがあります。

 

・・・気づけばまた,熱が入りすぎていました。こんなテンションで不意に自分の顔が画面に映ったりしたら,さぞつらかろうと思います。紙の本でよかった。

相変わらずの乱文で恐縮ですが,今回はこのあたりにいたします。