伽藍とバザールを読んだ
いったん箸休め的に,「伽藍とバザール」を読みました。読み終えてまず感じたのは,「これ,ほぼ日の経営じゃないか」ということでした。
伽藍とバザール エリック・レイモンド (著),山形浩生 (訳)
https://www.amazon.co.jp/dp/B00O4ASMLQ/ref=cm_sw_em_r_mt_dp_U_ICOrCb9B0990S
ともかく,完全にただの読書日記と化していますが,このままいきます。そのうち,ソフトウェアに関する内容もきっと書きます。きっと。
あと,ひとつ前の記事が,結城先生の目に留まったおかげで,多くの方に読んでいただいたようです。ありがたいことです。ですが,お察しの通りあまり賢い人間ではないので,どうも申し訳ないです。
さて,伽藍とバザールです。なんと kindle 版は100円です。
この本は,オープンソースプロジェクトが,なぜ優れた成果を生みだせるかを分析した論文として書かれたものです。いま読むと,おそらく多くの方にとっては特に目新しい内容ではないのでは,と思います。しかし,これが1997年に書かれていたということに衝撃を受けました。
内容は,まず前半から中盤までをたいへん乱暴に箇条書きでまとめますと,
- Linus と彼が作り上げた Linux 開発モデルはすごい
- そのエッセンスを掴んで実践してみた fetchmail プロジェクトもすごい
- FSF (Free Software Faundation) が gcc などのコア開発で用いていたプロセスは,中央集権的で,クローズドで,リリースもすっごい時間をかける,いわば伽藍 (Cathedral) 建設のようなものだ
- Linux に代表されるオープンソースプロジェクトは,やる気があり,優秀なエンジニアがどんどん集まって盛り上げていく,いわばバザール (Bazaar) のようなものだ
- 「目玉の数さえ十分あれば,どんなバグだって深刻ではない」
こんな感じになります。これだけなら,正直タイトルだけで薄々わかりますね。
後半の分析や従来型プロジェクトマネジメントへの反論のところが,まさに慧眼だなと思います。こちらもたいへん乱暴に箇条書きにしますと,
- まず,エンジニアたちをその気にさせるに足る,魅力的なアイデアが最初
- そのアイデアをオープンにし,開発をリードし,またほかの開発者から見て魅力的であるリーダ / コーディネータが揃えば,プロジェクトは走り出す
- 走り出したプロジェクトを駆動し続けるのは,集まったエンジニアたちへの適切な報酬 (金銭である必要はない,きちんと称賛され,貢献しているという誇りを得られることなど) と,皆が魅力を感じ続けられるような,開発の方向づけ
- 優秀なエンジニアたちがモチベーション高く (ある意味,自身のプライドを満足させるエゴでもある) よってたかってプロダクトをチェックするので,従来のような中央集権型マネジメントによって発生するオーバーヘッドも回避できる
- 開発におけるよろこび,というのは資産なのだ!
こんな感じでしょうか。これは,良い点であると同時に,非常に難しい点でもあるように感じます。エンジニアたちの好奇心を惹き続けられる魅力あるプロダクトでないと,飽きられてしまったら開発が終了するからです。
そして本書は以下のように続きます。
- まずはじめに、「誰かが思いついた良いアイデア」がある
- アイデアの良さを正しく理解し,スケールさせるのが組織やコミュニティ
- そのようなアイデアを生まれやすくする,また素早くブラッシュアップしていくには,開発者どうしが,相互に対等な関係で,ゆるい結びつきを複数もっているような組織 / コミュニティであるべき
- いちばんアタマのいい,効率のいい仕事の仕方は,遊ぶように働くこと!
読み終えて感じたのは,私の知る範囲でも「グレイトフル・デッドにマーケティングを学ぶ」や「How Google Works」に,この思想は受け継がれているということでした。そしてこういった「アイデアを大切にし,発案者が熱意をもってメンバーを募り,みんなでアイデアをどんどんブラッシュアップしていく文化」や,「メンバー同士の関係を可能な限りフラットにし,意見をどんどん言うことで仲間たちから称賛される組織」という意味では,まさに「ほぼ日」じゃないかと思いました。
オープンソースの精神とは,クリエイティブな発想をもっとも大切にしている。
クリエイティブな発想を最も大切に考えている「ほぼ日」は,このバザールの考え方を磨きぬいて,現実の組織に適用している。
もちろんほぼ日だけでなく,Google もそうでしょうし,Microsoft も近年ではオープンソースへの貢献がめざましいです。
新しい本を読むほうが,より洗練された知識がえられるとは思いますが,いま「伽藍とバザール」を読むことでも,以上のような楽しみ方ができました。
暑苦しい文章になりました。ここまでにいたします。